かきつばたとコスプレ

先日、杜若(かきつばた)という能を観た。
大して予備知識がなく観たものだから、その内容にちょっとショックをうけた。
簡単にあらすじを述べると、旅の僧侶がとある場所を訪れると、そこは、
業平が有名な杜若の句を詠んだ場所であるという女性が現れる。
それは何のことかと問うた僧侶に、女性は、その由来を聞かせ、衣裳を変えて踊り始める。女性は自分のことを杜若の精であると明かして、昇天する。

これは現代風に読み直せば、これは現代のコスプレ女性とやっていることは同じではあるまいか。
在原業平といえば、ご存じ伊勢物語の主人公であり、源氏物語に匹敵する恋愛小説のプレイボーイである。この能の演じられ時期には、すでに古典恋愛小説としては、完熟しきった人気作であったろう。
この女性は、日ごろからこんなものばかり読みふけり、ちょっとイカレテ自分のことを「杜若の精」だと妄想していたのかもしれない。いわゆる二次創作である。
そこに、真面目でインテリではあるが、ちょっと世俗に疎い僧侶がやってきて、杜若の件を知らないという。それは、もう認めたくないし、許せないのであって、得と僧侶に説教を始める。
あろうことか、お気に入りの杜若のコスプレ衣裳を身につけ、自分は「杜若の精よ」とばかりに舞いを踊り始める。
あげく、舞いの随所では、水面に映った自らの姿にうっとりする。
最後には、満足したのか昇天して消えていなくなる。
残された僧侶は、それをみて唖然とする。

この能が、なんらかの実話を題材としたなら、今も昔も人のやることに大して変わりはない。1000年前にも今と同じ感性で同じようなことを行っている。
それをみる周りの反応も同じなのである。