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カウンター (2006/4/4カウンター設置)
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四方蟻の謎 Double Dovetail Joint

不思議な造形物を調べていると、深みにはまって判らないことがどんどん増えていきます。
特に、そういった物体が日本固有の由来を持つとわかった時に先人の遺してくれたものに感謝の念を禁じえません。
たとえば、輪違い大根や黄身返し卵、千鳥格子や四方蟻などです。
今回は、そういった物体の一つ、四方蟻の由来について調べてみたいと思います。
四方蟻(筆者作)

多くの人は、四方蟻は、西洋由来のパズルだと誤解している人もいるかもしれません。
その根拠は、おそらくでH・E・デュードニーの書いた有名なパズル本Amusements in Mathematics(1917)が元ネタです。
この本を種本に多くのパズル書が書かれて、それが日本に入ってきたというのが大方の考え方です。
また、そういって書かれた本をさらに種本にしてという連鎖により周知のものになったのだと。

スローカム&ボタマンズ「パズルの世界」によれば、こういった継手のパズルは、「Puzzle in wood」で紹介されているという記述があります。
WyattのPuzzle in wood(1956)には、この継ぎ手パズルのバリエーションが紹介されているし、同時期のFaurotやTangermanのWhittling and Woodcarving(1936)にも詳しく書かれています。
この手のホィットリング本で一番古いのは、Walter L.FaurotのThe Art of Whittling(1930)です。

同様に、木工関係の本では、WOODWORK JOINTS (LONDON EVANS BROTHERS, LIMITED)に四方蟻がのっています。
この本の出版年は定かではないか、中の挿絵から 1927年ころではないかと想像できます。
Popular Scienceの別冊 Wood Carving and Whittling(1935)にも四方蟻が登場します。
同様にPopular Mechanics の別冊 The Boy Mechanic: Volume 1にも四方蟻が登場します。
これらは、時期が非常に近寄っていて、この頃にホィットリングを始めとする木工ブームがあったことを想像させます。

スローカム&ボタマンズ「パズルの世界」(邦題)では、1902年のThe Woodworker誌がもっとも古い文献だと述べています。
David Singmasterの「SOURCES IN RECREATIONAL MATHEMATICS」によると、Tom Titの「La Science Amusante」(1892)がさらに古い文献だと述べています。また、1887-1888にはトリック継手の特許がイギリスで申請されているそうです。
また、デンマーク博物館(Danish Technical Museum)には、Bogesen(1792-1876)が作った組木や継手が残っているそうです。
これらは、きっと北欧のトリッキーな木工文化を受けたものでしょう。
おそらく、西洋起源の文献では、このTom Tit若しくは幾つかの特許の1880-90年代がもっとも古い記録ということになります。

ところがどっこい、わが国の重要文化財の甲羅家文書では、
「御作事方仕口之図」(1729)「匠家仕口雛形(1728)」「大工雛形 規矩鑑集 帯指口1804-30頃」「継手仕口絵図(1818-30頃)」らに四方蟻、四方鎌の記述が見られます。
これらは、江戸城建築に携わった甲羅家の文書で、重要文化財級のものばかりです。
由緒正しいものばかりで、江戸城などの建築資料ともいえ今でいうJISや建築基準にあたるようなものです。
もしかしたら、江戸城のどこかに四方鎌が使われていたかもしれません。
こういった文献では四方蟻、四方鎌は遊びとしての継手ではなく、実用的な継手の一つとして記述されています。
先の西洋の文献より150年は遡ります。
我が国の木工文化を踏まえれば、実際は四方蟻、四方鎌が世に登場するのは、それ以前であろうことは容易に想像がつきます。
まだまだ眠っている文化財があるはずです。

以前紹介した番匠作事往来という江戸時代の往来物には、いろいろな継ぎが図示されていて、四方**のシリーズが記述されています。これらは、先の文書とはことなり、遊びとしての継ぎ手の要素が多いように感じられます。
他にも明治期の木工関係書には、四方蟻、四方鎌の記述は多く見られます。
「新撰軒廻 大工雛形 全」(1882)「継手雛形軒廻之割 完(明治初期)」「明治新撰 番匠秘事雛形(1887)」
などです。
明治に入ってからのものでも、Tom Titよりは古いというのがわかると思います。
時代が下って、「和洋建築大匠早割秘伝」 田中宋栄堂,明44.3(1911)にも番匠作事往来をネタというする図柄が書かれています。
こういった継手が時代を超えて伝えられていたことを想像させます。
「和洋建築大匠早割秘伝」は昭和に入っても出版し続けられて、現在の大工さんに教科書として伝えられたと思われます。

想像ですが、こういった前後関係をみるに、明らかに幕末から明治に掛けて四方蟻が海外に渡っていったと考えるのが
妥当ではないでしょうか。
おもちゃや組み木やからくり箱などは、当時日本に来ていた外国人が盛んに海外に持ち出している例が有ります。
実際、シーボルトの展示会で彼が持って帰ったからくり箱をみたことがあります。
四方蟻なんてものは、彼らにとっては、とっても興味深く感じられたに違いありません。

さて、我が国の伝来の文書をみると、一概に四方蟻、四方鎌といっても微妙にその形状が異なります。
どれも、これらの文書には寸法や造作がわかるように丁寧に描かれています。

「匠家仕口雛形(享保13年仲秋 1728)」
「匠家仕口雛形」には、四方蟻と四方鎌が描かれていますが、四方鎌は、二枚で目違いです。
これには、「四方見懸り水屋柱杯に継ぐ」とあり、四方から見える茶室
の柱に使えとあります。

 「御作事方仕口之図」(享保14年 1729)

「御作事仕口之図」には、四方鎌だけですが、目違い鎌が1枚のものが描かれています。

「継手仕口絵図(1818-30頃)」

「継手仕口絵図(1818-30頃)」では、四方蟻と四方鎌が描かれていますが、四方鎌は、二枚で目違いです。
ただし、二枚の鎌の中央部分の形状がことなります。
この「継手仕口絵図」では、「大キ成柱化粧継杯用」とコメントがついて、大きな柱の化粧用に使えとあります。

「大工雛形 規矩鑑集 帯指口1804-30頃」では、目違いで普通の鎌になっています。

このように使い道として、化粧用とはっきり断言していて、使う場所も茶室や大柱などの目に付く場所に使うと記されています。
一説では、こういった見栄えを重視する特殊な継手は、茶の湯の発達とともに完成したいわれております。


仕口や継手の研究書では、これを同じ四方蟻と四方鎌に分類してしまっていますが、素人目にも形状が異なるのが判ります。
これらの形状は、時代が下るとより単純なものになっています。
仕口継手は、或る意味この時代に完成し、造作やバリーエションが乏しくなっていくといえます。

後の時代に、西洋の文献に登場するのは、四方蟻のみで、どれも判を押したように全く同じ形状です。
構造を図示するだけの単純な表現のものばかりで細かい造作まではとても見てとれません。
このレベルの差はなんでしょうか。
だだ、残念なことに、明治以降は、西洋建築のブームもあって、継手などの工法は廃れてしまいます。
今では、木材の結合には、金物を使うのが主流になってしまいました。

さて、四方蟻について、もう一つ重要な文献があります。
「番匠町家雛形 明和七年(1770)」で、先に紹介した文献とはやや異なり、大工の難物といわれるものばかりを
集めたものです。絵図は少なく、言葉のみで紹介しています。著者によれば、こういった難物は300近くあるが、
その中で幾つかを選んで後学のために書き記したそうです。
なかなか謎な文献です。
そして、こちらには、なんと四方蟻の別法が載っています。
さらに、千鳥格子までもが登場します。

−次回 つづく−



参考文献:
「継手・仕口雛形の歴史的変遷過程 継手・仕口雛形の研究」日本建築学会計画論文報告集
「SOURCES IN RECREATIONAL MATHEMATICS」David Singmaster 


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